20060109:

こういう本は読むのに時間がかかってしまう。時間かけても流して読んでも,きっと理解できる程度は同じなのだろうけど,なぜかじっくり読もうとする。こういうの小説のつもりで読めないかな。

小説のつもりでと書きつつ,実のところ何年間も小説を読んだことがなかった。読む余裕もなかった。それも悲しい人生だから,ラジオで評判を聞いたこの小説を買ってみた。なるほど面白い。けれど,原稿書きが気になって没頭できない。ああ,こりゃまた時間がかかりそうだ。

じゃ,何の原稿書いているかというと,いまはケータイモラルに関する学習教材のこと。この本に載っている日本の携帯契約数の最新情報をWebで探したら,携帯+PHSをあわせてのべ9421万契約なのだそうだ。100人中72人くらいが持っている勘定。お隣の韓国は台数こそ3658万台だが,100人中では76人で少し多いのだそうだ。

以上。

20060106:

 現場における教師のノウハウっていうのは,初任者研修なんかで教わるというわけでもなく,自分でやりながら覚えていくということが多い。先輩に教えてもらえる環境にあれば幸せだし,技を盗める相手がいるだけでも救われるが,そうでもない状況にはまってしまうと,ノウハウの蓄積はなかなか難しい課題だ。
 そこで家本先生登場。教育技術のノウハウをあれこれ本にまとめていることでも有名。そのまま使えないにしてもヒントをたくさん提供してくれる有り難い著作群である。
 この本もその最新刊。今回は練習問題と題してクイズ形式で読ませる工夫がされている。それにしても何で私たちはこんなにクイズ好きなのかな。諸外国では既習事項の確認を「テスト」と言わず「クイズ」と言う場合も多いそうだ。私が数週間遊学した先でも,先生は「はいクイズ出すよぉ」と前回の学習の確認をしてくれた。

 答えた後に正解不正解を聞いて一喜一憂するのも楽しいが,むしろ著者はいろいろ話題にしたり考えて欲しいと臨んでいる。そうやって現場で望ましい実践やノウハウを自分のものにすることが大切なわけだ。

サイコロジー・ジャーナル『プシコ』(ポプラ社)

 2005年12月7日に新雑誌『プシコ』が創刊された。発行元によれば「日本ではじめてのサイコロジー・ジャーナル」だそうだ。もちろんサイコロジー(心理学)分野に光を当てた雑誌がなかったわけではない。『現代のエスプリ』という雑誌も心理学系だし,『こころの科学』はそのものズバリだ。人間関係の雑誌というなら『月刊PHP』なんてのは「ああ,あの小さい雑誌ね」とお馴染みのはずである。とはいえ,確かに「心理学」と銘打った「一般向け雑誌」はすぐに思い当たらない。
 読者ページになると思われる「プシコ・カフェ」のページにも触れられているが,米国には『Psychology Today』という一般向け心理学雑誌がある。そして私も海外へ行く機会に空港の売店で見かけたことがある。最近手に入れたのは2005年10月号。特集は「STATUS ANXIETY」地位心配症といった内容。つまり,周りの中で自分がどこに位置するのか,気にしてしまう私たちの心理についての特集である。この地位不安症を克服する方法が8つ紹介されているので,その見出しを若干怪しい訳だが引用してみよう。

1. 望ましい場所を見つけること
2. 余暇の世界で輝ける存在になれ
3. 大池での退屈か,水たまりでの繁栄か
4. 勝てる分野を賢く選べ
5. 嫉妬を踏み台に,立ち止まるな
6. 歳と共に熟すことを信じよ
7. 比べるのはよせ
8. 地位の高さは幸せと比例しない


 人は,参照しているグループ(reference group)を基準として人と自分を比較し,そして嫉妬や不安を感じるのだから,要するに望ましい参照グループを見つけたり,別世界を持ったり,環境を変えたり,分野を選択したり,嫉妬や不安を前向きにとらえたり,焦らず自分を信じたり,他人を気にしなかったり,価値観を見直したりすることでガスを溜めず,あるいはガスを抜いたりすればいい。そういう心持ちが大事というわけだ。
 まあ,とにかくこの手の心理の話題を,少しでも学術的な知見を援用してわかりやすく紹介しようというのが,一般向けの心理学雑誌の役目というわけである。


 こういう雑誌。普通なら米国『Psychology Today』なんかと提携して,米国記事も翻訳で載せるというのがありそうな雑誌作りのような気もするが,今回の『プシコ』に提携誌はない。そんなことしなくても,日本には心理学を生業として活躍されている方がたくさんいる。きっとそれだけでも十分誌面が作れると踏んでるのだろう。
 とりあえず年間の特集ラインナップは決まっているのだろうが,どこまで面白い誌面作りが継続できるのか,興味津々といったところだ。そのうち個別職業の心理分析なんかで特集をこなすような気もしないでもない。「教師心理の分析」なんて特集だったら,どうなるのか楽しみ半分,不安半分。

060104:『Design rule index―デザイン、新・100の法則』

 原著『Universal Principles of Design: 100 Ways to Enhance Usability, Influence Perception, Increase Appeal, Make Better Design Decisions, and Teach Through Design』の日本語版。デザインについて考えたい場合には必読本だと思う。教科書や教材を効果的にデザインする場合にも当てはまる。
 ビジュアルと解説をセンスよくまとめ上げた(翻訳本としても)上品な一冊なのだが,ビジュアルの力強さを代表する例として,本書の「古典的条件付け」原理のページに掲載されている飲酒運転反対キャンペーン・ポスターはご覧になるとびっくりするかもしれない。あの『ジロジロ見ないで―“普通の顔”を喪った9人の物語』で受けたインパクトに近いと書けば,おわかりいただけるだろうか。そして,キャプションにはこう書かれている。

もしもこのキャンペーン広告が,人々に飲酒運転を思いとどまらせることができないならば,何をもってしても不可能だろう。

 古典的条件付けのような行動主義心理学による学習理論は,認知活動の複雑さを説明するには力不足であることから,その後,認知心理学にメインストリームの座を奪われていく。もっとも人々が発想する学習の単純素朴な原理は依然として「繰り返し学習」のような行動主義心理学次元にあるし,説明的な認知心理学の成果がスパイスのように援用されているといった構図だろう。聞くところによれば,心理学の世界でそれ以上はもう「カウンセリング」という方法しかないと考えられているらしい。

 ここにはティーチング・マシンを夢想し口八丁手八丁で人間の肩代わりをさせる方法論を探し求める態度への引導が見え隠れする。やはり人海戦術ともいうべきカウンセリングが答えなのか。そして少しでも効率的に展開するための「構成的エンカウンターグループ」にこそ光があるというのか。正直なところ,まだ見通しが立つほどには材料がそろえられていない。それに門外漢だし‥‥,誰かやって。

060102:

 本日の戦利品。また一段と積ん読貧乏になった。

 カリキュラム研究者の端くれとして物事を考える際には,どうしても「学習」というものについても理解を深めなくてはならない。ゆえに心理学を軽くかじりつつ,認知心理学の世界の動向についてもリサーチしていたりする。本書はこれまでの「学び」に関する探求について整理し検討を加えている点で知識の確認に役立つ。

 ずっと購入しそびれていたが,ようやく自腹入手。書名通りの内容だが,認知心理学専門家による珠玉の学術エッセイを読むことで,教育評価の困難さや限界が,どんなニュアンスで彼ら彼女らに受け止められているのかをうかがい知ることができる,と思う。

 教育の世界に「デザイン」という言葉が入り込んでいる。インストラクショナル・デザインだとかカリキュラム・デザインだとか‥‥。ちゃんと考える材料として,ユニバーサル・デザインについても知見を深めよう。


 以上。

謹賀新年(平成十八年)

 あけましておめでとうございます。平成十八年から教育らくがき書庫を開始し,皆さんと一緒に教育関係やその周辺の本・雑誌の世界を探検しようと思います。どうぞよろしくお願いします。

 このページは「教育らくがき」という駄文書き活動の一環です。教育に関して遠回りしながら駄文を書いている「Webページ」(本家)を軸として,ポッドキャスト等をお届けする「ブログ」,そして教育関係の文献資料にスポットを当ててお届けするこの「書庫」という三本柱で展開します。
 どこまで展開できるかはわかりませんが,やれるところまでやってみようと思っています。どうぞ,こっそりお楽しみいただければと思います。また,皆さんからの情報提供も大歓迎です。

 ではでは,今年も頑張っていきましょう。

木原俊行先生のブログ

 教育らくがき書庫って,名前からうさんくさくない?ってお思いの皆様。確かにいまいち信頼性がないし,情報提供力もいささか心許なさそう。

 そこで,あわせて教育関係の本をいい感じで紹介してくれているサイトもご紹介していこうと思います。ご紹介していくサイトの信頼ある情報と,うちの空回り情報をあわせれば鬼に金棒‥‥。


 今回ご紹介するのは,大阪市立大学・木原俊行先生の「木原俊行@大阪市立大学です (http://toshiyukikihara.cocolog-nifty.com)」というブログ。教育学と教育工学の世界を股にかけてご活躍されている先生です。
 このブログのいいところは,毎回,教育関連の本を紹介してくれるところ。2006年元旦のブログ記事でも,さっそく文献紹介されています。いつかは「教育らくがき書庫」も献本されるような書庫ブログになりたいものだと,密かにライバル視しているブログだったりします(冗談です)。

 とにかく現場の先生たちには人気のあるブログですので,どうぞブックマークやRSSを。