060104:『Design rule index―デザイン、新・100の法則』

 原著『Universal Principles of Design: 100 Ways to Enhance Usability, Influence Perception, Increase Appeal, Make Better Design Decisions, and Teach Through Design』の日本語版。デザインについて考えたい場合には必読本だと思う。教科書や教材を効果的にデザインする場合にも当てはまる。
 ビジュアルと解説をセンスよくまとめ上げた(翻訳本としても)上品な一冊なのだが,ビジュアルの力強さを代表する例として,本書の「古典的条件付け」原理のページに掲載されている飲酒運転反対キャンペーン・ポスターはご覧になるとびっくりするかもしれない。あの『ジロジロ見ないで―“普通の顔”を喪った9人の物語』で受けたインパクトに近いと書けば,おわかりいただけるだろうか。そして,キャプションにはこう書かれている。

もしもこのキャンペーン広告が,人々に飲酒運転を思いとどまらせることができないならば,何をもってしても不可能だろう。

 古典的条件付けのような行動主義心理学による学習理論は,認知活動の複雑さを説明するには力不足であることから,その後,認知心理学にメインストリームの座を奪われていく。もっとも人々が発想する学習の単純素朴な原理は依然として「繰り返し学習」のような行動主義心理学次元にあるし,説明的な認知心理学の成果がスパイスのように援用されているといった構図だろう。聞くところによれば,心理学の世界でそれ以上はもう「カウンセリング」という方法しかないと考えられているらしい。

 ここにはティーチング・マシンを夢想し口八丁手八丁で人間の肩代わりをさせる方法論を探し求める態度への引導が見え隠れする。やはり人海戦術ともいうべきカウンセリングが答えなのか。そして少しでも効率的に展開するための「構成的エンカウンターグループ」にこそ光があるというのか。正直なところ,まだ見通しが立つほどには材料がそろえられていない。それに門外漢だし‥‥,誰かやって。