サイコロジー・ジャーナル『プシコ』(ポプラ社)

 2005年12月7日に新雑誌『プシコ』が創刊された。発行元によれば「日本ではじめてのサイコロジー・ジャーナル」だそうだ。もちろんサイコロジー(心理学)分野に光を当てた雑誌がなかったわけではない。『現代のエスプリ』という雑誌も心理学系だし,『こころの科学』はそのものズバリだ。人間関係の雑誌というなら『月刊PHP』なんてのは「ああ,あの小さい雑誌ね」とお馴染みのはずである。とはいえ,確かに「心理学」と銘打った「一般向け雑誌」はすぐに思い当たらない。
 読者ページになると思われる「プシコ・カフェ」のページにも触れられているが,米国には『Psychology Today』という一般向け心理学雑誌がある。そして私も海外へ行く機会に空港の売店で見かけたことがある。最近手に入れたのは2005年10月号。特集は「STATUS ANXIETY」地位心配症といった内容。つまり,周りの中で自分がどこに位置するのか,気にしてしまう私たちの心理についての特集である。この地位不安症を克服する方法が8つ紹介されているので,その見出しを若干怪しい訳だが引用してみよう。

1. 望ましい場所を見つけること
2. 余暇の世界で輝ける存在になれ
3. 大池での退屈か,水たまりでの繁栄か
4. 勝てる分野を賢く選べ
5. 嫉妬を踏み台に,立ち止まるな
6. 歳と共に熟すことを信じよ
7. 比べるのはよせ
8. 地位の高さは幸せと比例しない


 人は,参照しているグループ(reference group)を基準として人と自分を比較し,そして嫉妬や不安を感じるのだから,要するに望ましい参照グループを見つけたり,別世界を持ったり,環境を変えたり,分野を選択したり,嫉妬や不安を前向きにとらえたり,焦らず自分を信じたり,他人を気にしなかったり,価値観を見直したりすることでガスを溜めず,あるいはガスを抜いたりすればいい。そういう心持ちが大事というわけだ。
 まあ,とにかくこの手の心理の話題を,少しでも学術的な知見を援用してわかりやすく紹介しようというのが,一般向けの心理学雑誌の役目というわけである。


 こういう雑誌。普通なら米国『Psychology Today』なんかと提携して,米国記事も翻訳で載せるというのがありそうな雑誌作りのような気もするが,今回の『プシコ』に提携誌はない。そんなことしなくても,日本には心理学を生業として活躍されている方がたくさんいる。きっとそれだけでも十分誌面が作れると踏んでるのだろう。
 とりあえず年間の特集ラインナップは決まっているのだろうが,どこまで面白い誌面作りが継続できるのか,興味津々といったところだ。そのうち個別職業の心理分析なんかで特集をこなすような気もしないでもない。「教師心理の分析」なんて特集だったら,どうなるのか楽しみ半分,不安半分。