20060130:

 ニートの存在を自己責任の問題として捉えるフレームが流布する背景には,心理学からのこうした成果報告とのリンクが形成されてしまうからだろうか。『心理学化する社会―なぜ、トラウマと癒しが求められるのか』に論じられているような世相の中で,いろんな問題がごっちゃになっているのかも知れない。
 1章の「配慮」という強化子の話は,こういう記述が出来るのかと少し新鮮だった。「教員は確率操作に簡単に応じて,強化子そのものを大きくしてしまう。」というくだりは,私も「あ,いいよいいよ」と何気なく学生に配慮してしまうような場面がそれにあたるのかと思うと,妙に納得してしまう。これが多数の教員によって積み重ねられていたら,なるほど大きくなるわけだ。
 個々の章は,さほど文章量は多くないものの,ぎっゅと詰まったスリムな論文が並んでいる。興味深い。

以上